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帰ってきた 着るモビリティ MOBILE WEAR Mk-II(モビルウェア マークツー)

2019年夏、当研究所はMaker Faire Tokyo 2019(以下MFT2019)にて
着るモビリティ MOBILE WEAR(モビルウェア、以下Mk-I)」を公開しました。

そしてこの秋、Mk-Iのコンセプトはそのままに、
大幅な改良を施した
「着るモビリティ MOBILE WEAR Mk-II(モビルウェア マークツー、以下Mk-II )」を開発し、
Maker Faire Tokyo 2020(以下MFT2020)にて公開しました。

      fig1.jpg
          Fig.1 MOBILE WEAR Mk-II MFT2020のフライヤー


MOBILE WEAR モビルウェアは服の様に着用し、
外装(ウェア)により外部環境からユーザーを守り、
立ち姿勢(Standing mode)および座り姿勢(Stool mode)で移動することができる
新しいパーソナルモビリティです。
本稿ではMk-IIの詳細についてお伝えします。

fig2.jpg
               Fig.2 Mk-II 立ち乗りモード(左)とお座りモード(右)

以下にMk-IIの特徴をMk-Iと比較して示します。

     

Table 1 Mk-IIの特徴とMk-Iとの比較
table1_mkImKII_compare.jpg

■重量 
Mk-Iから10kg以上の軽量化に成功。 

■脚部機構 
SUS社のアルミフレームを使い、
着座=体重支持機能を持つことはMk-Iと変わりません。
Mk-Iから構成を抜本的に見直し、軽量化を図りました。

         fig3.jpg
                        Fig.3 脚部機構 Mk-II(左)/ Mk-I(右) 

fig4.jpg
                          Fig.4 Mk-IIの脚部機構 部品構成

基本的な構成は「CHAIRLESS CHAIR」に近く、
着座時には体重を床面に直接接地する構造部材で支えます。
この構造部材の先端にはStool mode時の直進安定性を図るため、
SAMSONG CASTER社製のデザインキャスター OLYM-TS-75 を取り付けました。

最終的な構成を決定するまでに、
ユーザーの姿勢にリンク機構が追従する様にフレーム、ジョイントの構成及び
バネ定数を変更するなど試行錯誤を繰り返しました。
SUS社のアルミフレームはジョイント部のボルトによって
六角レンチのみで結合・脱着できるので、
この様な組みばらしの繰り返しが容易に可能です。

fig5.jpg
                    Fig.5 脚部機構決定までの構想の変遷

また着座部分(スツールバー)には
Mk-I同様ポリエチレン発泡材を外装(ウェア)と同素材で包んだクッションを装備しています。

              fig6.jpg
             Fig.6 脚部機構に外装を取り付けた状態(上部に筒状のクッションが見える) 

■駆動装置
こちらも基本構造はSUS社のアルミフレームで構成。
インラインスケートの様にホイールを縦方向に配置し、
ホイール数を少なくして軽量化を図ることも検討しましたが、
簡単に着用できることを重視し、静止時にも安定する3輪構成(前輪:1、後輪:2)としました。
駆動方式はインホイールモータ(ダイレクトドライブ)の適用も検討しましたが、
ホイール径などの仕様変更が生じた場合に融通が利きやすいことから、
ベルトで前輪のスケートボード用のホイールを駆動する方式を採用しました。

fig7.jpeg
                               Fig.7 駆動装置

モーターは電動スケートボードなどによく使われるシャフト径8mmの
FOC(センサー付き)5065ブラシレスモーターですが、Mk-IIではセンサーは使っていません。
またモーターマウントは適当な製品が見つけられなかったため、
SUS社のアングルブラケット(SFJ-A01)を用いました(Fig.4参照)。

前輪1ホイールにつき2個のボールベアリング6900Z(内径10mm外径22mm幅6mm)を取り付けています。
このホイールをφ10のシャフト(HSS丸棒)に通すのですが、
製造ばらつきのためベアリングがシャフトに通らない場合があるので、
ベアリングは余分に購入しシャフトに通るものを選定、使用しました。

後輪にはMk-Iで使用したシシク社製キャスターSAJ-TS6-100Uのウレタン車輪を流用しています。

ベルトはなるべく大きなピッチ(5Mなど)の方が歯飛びなどの心配が少ないのですが、
適当な製品が見つけられなかったので、3mmピッチのベルトを採用しました。

これらのモーター、プーリー、ベルト、ギヤ、ホイールの形状・サイズ・出力の
バランス及び整合性を見ながら採用部品を決定しました。 
結果的に駆動力に大きな問題はなく、十分有効な選択だったと考えています。

また駆動装置上面にはクロックス状のサンダルをM6ボルトで固定しました。
 fig8.jpeg
                         Fig.8 駆動装置にサンダルを装着した状態

これにより駆動装置をユーザーの足で持ち上げることができるので、
後述の様にユーザーの足による操作が可能になります。
Mk-Iではキックボードなどと同様ユーザは駆動装置に足を乗せるだけなので、
装置を持ち上げることは出来ませんでした。

■ドライバ
電動スケートボード用のモータードライバで左右のモータを同時に制御します。
軽量化により操作性を向上させ、移動方向の変更はユーザーの足で行うことを前提としました。
そのため、モーターの制御は手許のワイヤレスリモートコントローラ(2.4G伝送制御、 有効距離8m )
による左右同時の速度制御のみで、標準的な中国製ドライバを採用。
購入時は基盤剥き出しの状態なので、3Dプリンタでケースを作成しました。
Stool modeでユーザの足が動かしにくい場合の操作を考えると
左右独立操作や始動停止時の加速度を調整するなど
きめ細やかな制御を行うことも考えられます。

          fig9.jpg
                        Fig.9 ケースに収めたドライバ

■バッテリ
リチウムイオンバッテリを採用しMk-Iから大きく軽量化かつ容量増加。
満充電状態から60分以上走行可能(Standing mode、低速、平地)であることは確認済みです。
配置場所はケーブルの取り回し等を考慮した結果、
ドライバと共にユーザーの装着するウェストバック内としました。

      fig10.jpg
                     Fig.10 バッテリとドライバを収めたウェストバッグ

■外装(ウェア)
基本的な意匠はMk-Iを踏襲し、
意匠上のアクセントとなる大きなファスナーや外光を反射する顔面部の窓
(0.2mm厚の透明樹脂板に乗用車サイドガラス用の反射フィルムを貼り付け、
周辺の枠を3Dプリンタを使用してPLAフィラメントで作成)も継承。
軽量化に伴い全体をスリム化しました。
fig11.jpg
                           Fig.11 Mk-IIとMk-Iの比較 

肩のあたりは我が心の師 石ノ森章太郎先生の
「サイボーグ009」のウェアをモチーフにさせていただきました。
fig12.jpg
                         Fig.12 右は当研究所美術部門による模写

ウェア素材はMk-Iと同じ「ロイヤルレザーナ」を採用。
MFT2019では来場した方から軽量化のため「タイベック」など別素材の採用提案も頂きましたが、
上述の様にMk-Iの外観意匠を踏襲するため、同じ素材を用いました。

※Mk-Iでは生地の接合に部分的に接着剤やステープラーを用いましたが、
  Mk-IIは全てミシン(SINGER社 COMPUTER 7900)による縫製。

Mk-Iでは形状保持のために使用したワイヤーフレームがあまり機能しませんでした。
そこでMk-IIではウェア内に形状保持および転倒・衝突時の衝撃緩和のために、
胸部、背部および肩周りから後頭部にかけてインフレータブル(エアクッション)を装備しました。

       fig13.jpg
                        Fig.13 ウェア内のインフレータブルの配置

ウェア内3箇所(頭:1、背中:2)に空調ファンを装備し、
ウェア内を快適に保ちます(背中側ファンには雨滴防止を想定した3Dプリンタで作成したPLA製フードを装備)。

fig14.jpg
                     Fig.14 頭部(左)と背中(右上:内部/右下:外部)の空調ファン

Mk-Iでも胸部に内気循環のファンを設けていましたが能力が不足していました。
そこでファンを増設すると共に吸気口を設けて外気を取り込み、
ウェア内環境を大幅に改善しました。
また吸気口には不織布フィルタを装備し、
顔面部の窓がフェイスシールドとしても機能するので、
飛沫の拡散・吸入リスクの小さい対人コミュニケーションも可能となります。

■部品調達について
Mk-IIに使用した部品表をTable 2に示します。
この表以外に、ウェア素材として「ロイヤルレザーナ」(¥980/m)などを使用していますが、
Mk-IIの部品代総額は10万円でお釣りが来ます。

      table2.jpg
                          Table 2 Mk-II部品一覧

調達先はネット通販が多く、特に駆動系の部品の多くは
低価格で品揃えが豊富な中国アリババグループの通販サイト「AliExpress」から購入。
安かろう悪かろうで運悪くババをつかまされることもある様ですが、
幸いにしてMk-IIではすぐ壊れたり火を吹いたりということはありませんでした。
納期は長めで発注から納品まで早いもの(バッテリ)で2週間、
遅いもの(ドライバ)で6週間以上かかりました。
今年はコロナ禍にあったのでその影響もあったかもしれません
(バッテリと液体ものは特に時間がかかる、という話も聞きました)。

■HOME BREW MOBILITY 自家醸造の乗り物;モビリティを民主化せよ!

Mk-IIはMk-Iと同様、ガレージすらない家庭のリビングで作られました。
この規模であれば だれでも好みのビールを自家醸造するように
自分にあったモビリティを作ることができ、
もはや「モビリティの民主化」とも言っても良いでしょう。

近年は「日本電動モビリティ推進協会」が発足するなど、
パーソナルモビリティを取り巻く社会環境に大きな変化が起こり始めています。

「コレ(Mk-II)なんかより、自分ならもっと使いやすくて、カッコいいヤツができる!」
と思われる方もいらっしゃるでしょう。
ぜひ自分好みのモビルウェアを作って、モビリティの多様性を広げてみませんか!

fig15.jpeg
                      Fig.15 モビリティは自家醸造・民主化できるんです



■メディア掲載
MFT2020に出展したMk-IIは、Make:
ラジオライフ 2020年12月号などに取り上げてもらいました。
こちらもぜひご覧ください。

FaceBookでも順次情報発信しますので、ご参照願います。 →こちらをクリック
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